「本日の務めはッ!」「肉弾幸なり  

一条さゆり・濡れた欲情

監督:神代辰巳
出演:一条さゆり 伊佐山ひろ子 白川和子
粟津號 高橋明 小見山玉樹 中平哲仟
小沢昭一 絵沢萠子 中田カウス 中田ボタン
制作年:1972年 日活

ずぶりずぶりと奥襞によばれて


 神代、初見。
 既に評価の高い-情報をもらっている-監督作品を観るときはどうしてもそれに対しての反動で観てしまうのは悪い癖だ。ざらついた臭いまで一緒にとりこんでいそうな70年代のむっとするような映像の中で、はねかえりの伊佐山ひろ子が何をしようと俺の中には届かず。だが、真紫の蝋で胸を焼いて登場した一条さゆりの存在感に圧倒されはじめる。二度流される絞首刑場面と幼児期のそぼ降る雨の中を歩く父娘の映像に「騙された」わけではないのだろうが、檻の中よりも虚ろな触れたくない何かと生とを隔てる薄氷の上をすすむようなキモチに追い込まれ始める。引退公演と並行して描かれる一条さゆりになれない自分のやきもきした伊佐山のやり場のない姿、そして逮捕劇のおかしみ、警察署前で脱ぎだした伊佐山が刑事の肩にかつがれて細く暗い通路に小さくなってすすむ姿に生命の刹那・さを実感させられた。表現力というのは鋭利な刃物である場合もあれば、神代のそれのように鈍器の場合もあるのだなあ。
 一条さゆりの胸のたるみっぷり、化粧の下の皺もまた、この俺にある人生体験ではあるまいに突きつけられる生命を感じる。もちろん、老いも含めての生命だが。

Last Update : 2001/12/10